地域との共創を競争力へ
米プロクター&ギャンブルのように日本の神戸にあったアジア拠点をシンガポールに移す企業もあれば、APPLEをはじめとした世界の巨大企業が日本への工場建設など、日本を基軸に様々な動きが見受けられる。
自民党政権は地方創生を打ち出し、地域活性だけでなく、日本回帰も目指す。
国内の生産比率を再び5割に戻す、中国や東南アジアから、国内の工場に生産を再移管する。
昨年来、メーカーの国内回帰の動きが頻繁に報道されるようになった。製造業が戻れば、物流や雇用など、多くの面で影響がある。実態はどうであろうか。まず、具体的な数字で表してみる。
日本国内の設備投資
日本政策銀行の調査によれば、2013年度の実績はプラス3.0%、今年度の計画も、プラス5.1%と増加傾向、今年度の資金計画で資金計画を高める使途を聞いても、国内設備投資がトップで海外設備投資や、人件費を上回っている。
そして、経済産業省発表の工場立地動向表。これについても14年上期の調査結果は件数で前年同期比、53.7%増し。同じく面積で34.4%増加。
最近の急激な円安で周りの企業も、中国で生産するメリットを享受しにくくなっており、九州の日用品メーカーによれば、円高の際、儲けの柱として海外輸入を増やしたにも関わらず、2015年の今ではそれが、利益の大半を食いつぶす、負の商品となっているという。
昨年来の国内回帰の主な要因は、上記に示したように、円安の要因が大きい。しかしそれは、為替の状況が許せば、やはり、国内で事業を行いたい。という本音のあらわれであるだろう。
果たして国内回帰は実現するのか。アメリカでは、自動車産業が栄えた全盛期は、デトロイトなどの自動車製造地区は大変繁盛した。しかしながら、一度、製造拠点がアメリカから海外へ移ってしまえば、もうその街に繁栄が戻ることはない。
米アップルも台湾、中国企業に所謂チャイワン企業に製造を移し、今では、日本へと工場移設をしている。
日本への製造業回帰は果たして実現するのだろうか。
あらゆる分野で製品のライフサイクルが短くなり企業は常に革新的なアイデアを形にしていくことが求められている。やはり、細やかで柔軟な対応ができる日本国内製造が重視されるのは当然でもある。
前例のない挑戦を後押しする国の施策も
実際、国の施策もそうした企業の後押しをするものも充実してきている。例えば
[グレーゾーン解消制度][企業実証特例制度]である。
グレーゾーン解消制度は、企業が前例のない取り組みをしたり、製品を開発する際、それが既存の規制に抵触するかどうか事前に確認できる制度だ。他社に前例がない事業の場合、規制の対象になるのか不明確な場合も多い。そうした時、企業が詳細な調査をしたり、関係省庁と交渉るることは難しく、結果的にわからないからとめておこう ということにもなりかねない。
そこで制度では、企業が所管大臣に規制の有無を照会すれば、あとは関係省庁間で確認が行われ、結果が報告される。つまり企業に代わって所管省庁がグレーゾーンを解消してくれるのである。
さらに、グレーゾーン解消制度で 規制あり と判断されてしまっても、特例的に規制の緩和を求められるのが、企業実証特例制度だ。こちらも、所管大臣に活動計画などと共に申請すれば、関係省庁間で協議をする。
こちらの制度はすでに活用が始まっており、例えば、車の運転者が突然意識不明となった場合、安全に自動停止させるデッドマン装置が車検の対象になるなどとしている。
加速する国内回帰の動きだが、重要なのは、それを持続的な成長につなげられるかどうかである。単にコストの面からみるだけでなく、中長期の視点で国内の環境や市場を生み出せば、それは、競争優位の確保に大きく貢献するだろう。
地方創生も国内回帰も、まずは、コストから考えるという概念はまず、捨てたほうがいいのかもしれない。どの分野で、新しく市場を生み出すのか、これが企業が生き残るために最優先で考えなければいけない。国を問わず、働く人間がいかに知恵を出すかどうかが、企業の生き残る道である。
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