「訪日外国人にモノを売る」=インバウンドビジネス
数年前から日本企業の重要な課題である。
日本へ流入する訪日観光客をターゲットに、試行錯誤を重ねている企業は多いだろう。
昔からの顧客を最も大切にしている、総合ディスカウントストア「多慶屋」が、インバウンドを取り入れ、大きな成果をあげた成功モデルとして注目を浴びている。
・他社との差を生み出す「多慶屋が取り組んだインバウンドビジネス」とは。
食品、日用雑貨、化粧品、衣類、ブランド品、家電、仏壇、家具...と、実に多種の商品を取りそろえている多慶屋。
ここへ来れば、求めている物は何でも手に入るであろう。
「せんべい1枚から美術品まで、お客様のニーズに応える店づくりを進めてきました。」と多慶屋の代表取締役社長の竹谷宗二氏は語る。
自社で「ケイ・トランスポート」という物流子会社を立ち上げ、物品の配送から設置、処分品の受け取りまでグループ内で請け負っている点は大きい。
多慶屋のビジネス法で素晴らしいのは、先見の明がある点であろう。
「爆買い」という言葉が世に出回る前から、増入しつつある中国人観光客に狙いを付け、2008年には銀聯カードの決済を開始している。
更に、2015年には中国のアリババグループが提供している「アリペイ」を日本の小売業で初めて導入。
クレジットカードを所持しない中国人向けに、決済サービスを充実させた点は強みである。
・国内顧客と訪日観光客の双方を捉えたビジネス法
インバウンドを重視したビジネスは、国内顧客を逃してしまう結果になりかねない。
対に、日本人顧客を大切にすると、インバウンドの波には乗れない。
双方を逃さず成果をあげた、多慶屋のビジネス法とは何か。
多慶屋と言えば「多種多様の商品を取り扱う」ディスカウントショップ。
その商品数は、なんと19万ものアイテムを取り揃えている。
どこよりも安く、何でも手に入るという評判で顧客を逃さない。
多慶屋が重点を置いたのは、それまでは店舗ごとに管理していた販売数、客層、
売上高などの分析データを「カテゴリー制」に一貫して切り替えた。
商品の選定から売り上げ管理まで、カテゴリー別にチームを編成し、各チームが顧客目線で商品を捉える事により、従業員の意識も、店舗の質も向上した。
また、1980年代からPOS(販売時点情報管理)の導入、1990年代からBI(ビジネスインテリジェンス)活用を継承するもので、勘だけに頼らないデータに裏付けられた分析力を強化していった。
更に昨年、オラクルの予算管理クラウド(Oracle Planning and Budgeting Cloud Service)を導入。
「10店舗の48フロアに分かれている売り場、さらに都内有名会場を使用した家具インテリアプレミアム催事」などの販売チャネルも包括し、多次元の自由な切り口で予実管理や損益分析などを行える管理会計の仕組みを求めていました。これまでは初期投資や運用コストの重さから導入を見送ってきたのですが、クラウドサービスであれば負担は格段に軽く、導入によって得られる合理化によってコストも十分にペイできると判断し、導入に踏み切りました」と竹谷氏は語る。
予算管理クラウドの効果は大きく、以前は不可能であった詳細な商品別の経費按分が可能となり、販売利益のスピードも格段に上がった。
また、これまで1人の経理管理者に任せていたデータ収集から、どのようにデータが処理されているか、を明確にする事で、新たな改善点が見えてきた。
つまり
・情報分析の強化
・カテゴリー制への切り替え
・予算管理クラウドの導入
以上の3つをバランスよく取り入れた事で、従来の日本人顧客を逃すことなく、インバウンドビジネスにも成果をあげる事が出来たのである。
他社よりも一歩秀でるには、時代の波に乗るだけでは事足りず、先を見据えて変化を取り入れていかなければならない。
多慶屋から見習う事は多い。